今日は付加価値と交易の経済論について、です。
まず、始めに要点というか結論を述べておきますと
交易とは付加価値の流れが起きている状態である、ということです。
中世〜近世の特に地中海交易の例で例えますと、まず交易とは基本的に
余ったものを運んで売り買いして他のノード(拠点港)もしくは都市から
財・貨幣の流れを受け取るものである、ということを確認しておきたいと思います。
また、副次的には他の街などの高級品や日用物資などの交易品もその街が受け取る
財というか資産に当たる、ということも併せて押さえておきましょう。
特に、先ほどの地中海の例ですとマルセイユ・バルセロナ・ジェノヴァ・ナポリ・ヴェネツィア・チュニス・
アテネ・ベイルート・アレクサンドリア・イスタンブールなどが大きなトレードノード(貿易拠点港)として有名ですね。ここで挙げたような街はある特徴があります。その特徴とは扱っている商品・交易品の付加価値が総じて高い、ということです。これは地中海の例でいくとローマ時代以前からあるマルセイユ・バルセロナ・ナポリなどの都市で特に顕著なのですが、歴史のある貿易都市ほど扱っている交易品の付加価値が高くなる傾向があるのです。理由は歴史のある貿易都市は古くから交易していますからそれだけ財というか資産を貯めこんでいます。それだけ資産があると産業や生産にも投資しやすくなるため、結果として大まかではありますが付加価値の高い交易品が作れるようになるのです。ここでいう付加価値とは単純にいうと500円で作ったものが600円で交易所の店頭に並び運ばれた先で900円の値段で買い取られ……という流れにおいて(ここではあくまで円ですが)生産元ではコストは除いてまず500で作ったとします。次に交易所に買い取られる段階で600円ですから100円の付加価値が発生していることになります。さらに船賃は置いておくとして船で運ばれ運ばれた先で900円で買い取られるわけですからさらに300円の付加価値が発生しているわけです。合せて400円の付加価値が発生しているわけですがこれは市場そのものに400円の新たな価値が生み出されていることになります。資本主義ではそのように生み出される価値を工場と投資によってさらに効率化しようというものが資本主義というものです。このように生産・交易の段階で新たに価値が生まれること、または生まれたものそのものを付加価値と呼びます。詳しくは苫米地英人氏の経済本各書が詳しいと思います。
このように付加価値が生まれるのが生産・交易・流通というものなのですが、この稿の主張に戻りますと歴史のある貿易都市では付加価値の高い(相対的に価値の高い)交易品が扱われていることが多い、ということです。交易の流れでいくと豊かなところからそうでないところにモノや資財(商品)が流れるのが交易ですから当然小さい港に対してモノが流れます。また、貿易流通網(ノード)の下流へ下流へとモノが流れていくことになります。大抵の場合はモノや商品の代価として貨幣や高級品、貴金属で支払いが行われますから相対的に交易路(ノード)の上流の街に対して資財が流れることになります。また、もし交易の上流の街で価値があるとみなされるものであれば貨幣の代わりに支払いの材料になることもあり得るわけです。そのように貿易決済の代わりになるようなものでも付加価値があるもの、という言い方ができるわけです。地中海の例えでいくとヨーロッパとイスラム圏ではそのように互いに交易が行われていたため交易の相手側により利益があるように相手にとって付加価値の高いものを流していました。ジェノヴァで普通に売っているものがベイルートでは高値で買い取られていったり、といったことがその例です。そういうふうに他の街では高値で買い取られるものを船などで運んで利益を得る行為を交易といいますしそうして発生した利益などを含め付加価値と呼びます。
つまり、古くからある貿易都市では総じて付加価値の高いものが生産、取り扱われていることが多い、といえるのですがそこからいくと交易では付加価値(の高いモノ)が交易路(トレードノード)のより上流から下流へと流れていく現象が起きます。交易路を流れるということはそれだけ利益=付加価値を生みますから交易とは付加価値を流す行為、より上流から下流へと流す;やりとりする行為である、ということがいえると思います。交易では運ばれてきた交易品・商品に対して貨幣または交易品、物品で代価の支払いが行われますから当然運んだ元にも資財が流れてくるわけです。まぁ、これは東インド会社の例でいくと会社独占形態などの一部のノード(拠点港)に資財・商品を集めるやり方を除いては、の話ですが(実際香料諸島などに銀や綿織物などで香辛料の支払いが為されていましたがちゃんと正当な代価だったのかは疑問)とにかく交易とは基本的には商品・交易品と代価またはそれに対する交易品のやりとりである、ということをまず確認しておきたいと思います。そういう行為であるとすると、発生した付加価値に対して資財が流れ込んで来るので交易路の上流・下流のどちらでもそういった資財を生産や産業などに投資してさらに付加価値の高いもの、よりコストの安いものを作ることができるようになる、ということが言えると思います。ちなみに、古くからある大きな貿易都市では当然より取引の歴史がありますからそういった資財も多いのではないか、ということがいえると思います。実際、そういった都市では大きな歴史的建造物や文化的遺産がたくさんあることが多いですからそれが流れてきた、というか集まってきた資財の象徴でもある、ということがいえます。より交易路の下流の、小さな都市・街にも代わりとなる交易品を運んでいればちゃんと資財の流通がありますから問題ないのですが、とにかく、交易とはそういった資財の流れ、付加価値の流れ;やりとりである、ということがいえるのがお分かりいただけたのではないか、と思います。要点としては、付加価値はより高きから低きへと流れる、ということになると思います。ちゃんとした流通網を持っていれば、より高い付加価値の商品をできるだけ多く作ったものがより資財を集められる、ということなのです。まぁ生産や産業というものも原材料というかコストがかかるものですから、できるだけ高い付加価値の商品を造ったほうが儲けられるし、コストも安くあがる、ということがいえると思います。価値の高いものを生み出せば資産が集められるのですから、割と簡単ですよね?とにかく、自分にとって価値の高いものを生み出していけばいいわけです。比較しても限度がありますから、自分にとって付加価値が高いものであればいいわけです。そういって生み出されたものが、市場に流通し、より高い付加価値を生み出していくわけです。よりいいものを生み出せば市場に付加価値が発生し、その流れの結果として資財・資産を受け取ることができるのですから仕組みとしては簡単ですよね?作る・作らない以前の問題の前に市場の大きな流れをしっておく、というものがあるのです。
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